取材協力=モトショップトノウチ phone 0277-32-5088 http://tonouchi.jp/
オーナーが時間を重ね、完成に至ったストリート・チョッパー
派手なペイントワークや驚きのギミックを散りばめたショー・カスタムがある一方で、オーナーが数年に渡って乗り継ぎながら一台のチョッパーを創り上げること。たとえば、ノーマルのバイクを手に入れ、「まずはハンドルとシートを変えた後にキャブとマフラーを変え……」といった感じで時間をかけて愛車を製作する行為は、この上なく楽しいのですが、ここに紹介する群馬のモトショップトノウチによる一台も、まさに後者のようなアプローチで生み出されたもの。あえて言えば、派手なギミックもなく、あくまでもオーソドックスなチョッパーとなっていますが、こと『ストリートを走る』という前提で考えれば、こうしたシンプルな車両に心惹かれるのも筆者である私、マコナベの個人的な本音です。
もちろん、クリエイティビティーに富んだチョッパーもそれはそれで魅力がありますし、そうした車両が海外から注目を集め、今の我が国のシーンがあるのですが、派手なショーバイクも、シンプルなストリート・チョッパーも『どちらもある』からこそ、このカスタム・ジャンルが成り立っています。そんな『幅の広さ』が『アメリカン・カスタムカルチャー』の面白さではないでしょうか?
そうした中で、この一台に好感を抱く理由は、オーナーが少しづつショップに依頼し、コツコツとカタチにしたという部分でシンプルながら丁寧な作り込みにも、愛情と拘りを感じます。シッシーバーの長さや手前に引かれたハンドルバーのポジションなどは、やはり「乗りながら、カタチにしていった」ことが伺えるもので、そのバランスも絶妙なもの。チョッパーの原則の一つにある「シンプルさ」を極めたからこそ、より一層、ビルダーの登之内豊氏の仕事の丁寧さを感じさせるものとなっています。
ベースとなった1980年式FXEをハードテイル化し、製作されたフレームや同年代の『H-Dウイング・ロゴ』があしらわれたピーナツタンク、センターリブのサイクルフェンダーなど、まさに『定石』に則った仕上がりが、この一台には与えられているのですが、繰り返しを承知でいえば、シンプルな分、その仕事の丁寧さがより際立つものとなっています。
これは筆者である私自身の経験なのですが、こうした「ビッとした」空気感のバイクは、得てして走りも良い場合が多いのですが、トノウチによるこの一台も「きっと楽しい」ことが伺えるものです。
オーナーが距離を重ねながら「育てた」空気感……乗り手とショップの良好な関係性が滲み出る一台です。
エンジンは1980年式ショベル1340cc。キャブはファンネル仕様のS&SスーパーEを装着。内部にゴミの侵入を防ぐネットを備えるあたりにもビルダーの誠実な姿勢が垣間見える。
プライマリーは旧車的なムードのダイヤモンドタイプに交換。アンダーソンタイプのペグも、この手のチョッパーでは定番である。
ピーナツタンクにはベース車両の時代に採用された『H-Dウイングロゴ』のデカールを貼り付けた上でペイント。こうしたアクセントがマシンの表情を引き締める。
縦タックロールのサドルシートとピニオンパッドもトノウチによるワンオフを装着。ホースシュータイプのオイルタンクも旧車的なムードを強調する。